コンセプト
be-spoken
BESPOKE (オーダー、誂え)というのは、そもそもどのような考え方をとるべきか?クライアントの言いなりになりモノをつくり、最終出来上がった 時点で、評価を得て今後に続くか続かないかを決めてもらうのか? もしくは、店側(売り手)のスタイルを押しつけ、主導権を店側が握り、クライアントの細かな要望は、打ち消していくのか? 僕は、そのどちらも“BESPOKE”と言うモノに反すると考えています。語源の発祥は、イギリスのスラングからはじまった言葉。Be-Spokenすなわち話し合ってつくる 此が、Bespoke(誂え)であります。クライアントの趣向、癖、色の好み、シルエット、素材などをじっくり話し合い、技術者がそれに答えようと持てる技を尽くす。すなわち、新しいもの作りにおいてはリスクは、50/50なのであります。自分自身の好み、着癖、体型補正、考え方を伝えて頂かないことには、本当の意味でのすばらしいもの作りは出来ません。お互いに、様々な経験、知識、教養、美学が重なり合い、この世界で個人のみが優越に浸れるモノが出来るのです。
美
多くの人に好まれるスーツ、シャツ、靴にはいくつかの共通の条件があります。それは、均整の取れたスタイル、包み込むような柔らかな着心地、履き心地。それでいて、構築された男性的フォルム。スーツやシャツで言えば、ビルドアップされた、胸や肩、それを強調するかのようなウエストのくびれ、大きすぎず小さすぎない上に向いたヒップ、そして、程良く浅い股上、、腿から膝そして裾にかけての美しい足のライン。靴では、ロングノーズのシルエット、シャープなつま先、踏まずのくびれ、均整の取れた踵。いわゆる、歴代のスーパーカーを思わすフォルム。簡単にいえば、007 JAMS BOND を理想とする人が多いはずです。そんな理想のスタイルやフォルムを求めて自分のモノに出来るのか?そして、そこに着心地や履き心地をも追求し獲得できるのか? 上で述べていたBESPOKEの方法では、まず無理でありますし、ましてや既製品でそれが現実の物になるはずもない。では、どうしましょう!
理想を現実に変えるには、まずどうしたらよいか? それは簡単です 理想の身体を作ることからはじめる。でも、誰しもがそう思っていても簡単にできることではない。理想とするシルエットを得るために努力をする人は、何%いるでしょう?おそらく、身体の健康を害さない限り、今の現状の体型で満足はしていなくともそれなりに納得されている方が多いはずです。しかし いざ、自身がリスクを背負い高額のお金を支払うということになると別であります。その時には、人間誰しもがリスクの金額分を求めてしまいます。そして出来上がったモノを目の当たりにしたときに、残念な気持ちを抱きBESPOKEに嫌悪感を抱くのです。
skil
BESPOKEは、一人で出来るものではありません。ましてや、職人の技術のみで成立するものでもない。技術を活かすのも殺すのも、“人とのコミュニケーション”なのであります。BESPOKEとは、先人達が培ってきた確かな技術とセンスが融合し、そしてそこから更に日々進化し続けるモノなのであります。今までのバランスをいかに洗練されたものに進化させていくか。現状の壁を越えていくのがまさに技術なのであります。ミリ単位の進化を繰り返し、少しずつ壁を取っ払っていく。その為には、50/50の関係で、クライアントと職人側が一緒になって進んでいかなければ、現実世界から抜け出せず、ましてや理想とする世界にはいきつけないのであります。理想を手に入れるためにも、互いの言葉を連ねていくのは必要なのです。
コミュニケーションを繰り返し、イメージが出来上がった。ここからが、技術の革命が必要となるのです。体型に合わすのではなく、補正する。身体に合わせて良いのは、均整の取れた身体のみですから。たとえば、バスト100、ウエスト95、ヒップ102の人の体型に合わせてしまえばどうなるでしょう? ほぼ、寸胴なスーツが出来上がります。靴では、扁平の足にサイズを合わすことを目的としてしまえば、ずんぐりむっくりな靴が出来てしまいます。そこの現実を理想の形に結びつけるのが技術!ただ単に、小さくつくるのではなく、メリハリの利いたシルエットそして、機動力の上がる運動量や歩行機能。きつくて、しんどいスーツや履いていて痛い靴というのは、論外です。あくまでスーツ、靴は、着用する人に嫌悪感を抱かせず、快適にそして美しい容姿をつくり出すのが、目的であり条件であります。職人の技、美学、そしてバランス感覚が理想とするものを現実にしてくれるのです。
相性
BESPOKEで、なかなか浸透していないことがあります。それは、バランス!体型のバランスは、メリハリの利いたシルエットに構築しなおす“補正”という言葉で述べましたがそれとは別に、アイテム同士のバランスも重要です。勿論、金額、色合わせなどのバランス(相性)もありますが、ここで重要なのは着用時のバランス(相性)です。スーツ、シャツ、靴におけるドレススタイルにおいて、どれも単独で使用するモノではありません。そしてここに、アンダーウェア、ソックス、タイ、チーフ、ハンカチ、カフスが最低限必要となってきます。このどれを省いてもドレススタイルにはなりません。
ドレススタイルの主体として持ってくるのをスーツとすると、まずシャツは上着に合わすのがセオリーです。上着の鎌深、袖口幅、パンツの股上寸法によって、シャツの寸法が決まってきます。鎌深が浅いスーツになればシャツは、それと同寸もしくは+2m/m、袖口幅は手の大きさ、手首周りにも連動してきます。スーツの袖周りに引っかからず、手、手首とのバランスを考えます。シャツの着丈はパンツの股上寸法に合わせ、浅ければ長く、深ければ短くと、裾を入れたときに邪魔にならないようにします。このときに、重要なのが上着と、シャツの下袖寸法を長くとることです。この寸法が、足りないと腕を上げるだ動作を邪魔し、動いてるうちに裾がパンツから出てしまいます。他にもバスト、ヒップ、スリーブなど、細かい寸法の相性はあります。これらの寸法のバランスを考えて、スーツとシャツを組み合わせなければ、美しい機動力は生まれません。シャツが邪魔してしまうのです。重要なのは、シャツとスーツが連動し動きやすいことです。
靴とスーツのバランスにおいて最も重要になってくるのが、足長と裾幅、股下のバランスです。ゴージ位置から胸、ウエストのシェイプそして裾にいくに従ってメリハリの利いた流れが出来ます。上着からの流れを損なわないように、クリースラインが腿、膝、裾へ流れていき、靴に繋がり、つま先で消えます。美しいスタイルというのは、川の流れのように流暢に流れていきます。何処かで、流れがとぎれると少しコミカルな感や可愛らしい感を出すことになります。狙ってそうするならともかく違うのであれば、流れは決してとめてはいけません。洗練されたスタイルを望むならば、足を美しく長く見せるのが当然です。股下寸法を長くとり裾の上がり位置で、靴の積み上げ(踵)に真後ろで1.5cm〜2cmかかる(通常積み上げの高さは3cm)。裾幅、靴のレングス(足長)のバランスを考え、裾をフレアーそしてモーニングカット(前が後ろより約1.5cm短くカットしたモノ)にするとフロントに軽くクッションが出来る。裾幅も広いのでロングノーズの靴のシルエットにはまります。上着 bast 90 west 74 hip 88 ドロップ寸16cmの場合で具体的な寸法を述べると、25cm、捨て寸3.2cmの靴では、パンツの裾幅22cm、膝幅 19.6cmのバランスがちょうど良いでしょう(腿、膝、ふくらはぎの肉付きで勿論変更はあります)。フレアー、テーパード、ストレートのシルエットと靴の相性はその木型により様々です。ですが、必ず木型に合った、もしくはそのスーツにあった寸法があります。その寸法の相性を見極める事が美しい流れを生み出し、そして上着のドロップ寸全てが連動して、美しいシルエット、機能の伴ったドレススタイルが生まれるのです。
Simple
着るという行為とモノを創るという行為は、一見すると全く違う行為である。しかし、着る側がなくてはつくる行為はただの展示品と化してしまうし、つくる行為がなければ何を着れば良いのかということになる。いわゆる、需要者と供給者という話になるのだが、BESPOKEになるとこれがそういうわけでもなくなる。あるモノ(既製、既存)に対しての欲求を求めることは、簡単であるし、判断する際は、視覚と触覚で確認が出来る。しかし、ゼロからモノを創り、創り上げていく中で、判断することは決して容易ではない。話合って、その場で盛り上がり、自分自身の理想のものが出来ると信じ時間とお金をかけた結果、理想とはかけ離れたモノを目の当たりにした時の何とも言えない悲しい気持ち。しかし、同じ時間とお金をかけた結果、全くもって自分自身の想像以上のモノが出来た時の高揚感、感謝、喜びは測りしれないモノである。何故、ここまでの差が出るのか?会話を十二分に重ね、時間をかけてゆっくりと道を進んで行くBESPOKEの世界!それが、何故全くもって明後日の方向のモノが出来てしまうのか?その理由は、簡単である。それは、技術の差である!!!たくさんの引き出しを持っているか持っていないかで、限界値の見極めにも違いが生じ、求められた要求に対しても違いが出てくるのである。ただ単に、見てくれが良いとされるモノをつくる事は、乱暴な言い方をすれば誰にでも出来ます。しかし、そこに美しさ、動きやすさ、かっこよさ、快適さといった事になると引き出しを多く持ち得た職人にしか成し遂げれない技術があるのです。限界を見極める目と手、塩梅という感覚、チャレンジ精神!そして、絶妙且つ巧妙なセンス。挑戦した事だけで満足せず、必ず結果を出す!!!これが職人の粋であり技術、そして美学であると!!!どんな人でも、装う行為をするというのは、必ず自身をよく見せたいからである。大枚はたいて、時間はかかって他人からよく見られないんじゃ、何してるか分かりません。技術者というのは、モノのつくり方、理由のみを求めてしまう傾向にある。でも、それでは格好いいモノは出来ない!
せっかく、クライアントが来て下さってお金を払って頂くならば、技術を持って そして美学を持って尽くし、その方自身が、自信を持って世に出て行く装いを提供するのが、役目であります。着やすい、履きやすい、身体か細く見える、足が細く見える、歩きやすい、格好良く見える、快適であるこうした単純な事を可能にするのが技術者であり、それを求めるのがクライアントである。
職人の技術を持って、単純であり難関なもの作りに挑戦し可能にしていくのが、私たちOguriであります。